イケメン佐野くんのお誘い【2】
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イケメン佐野くんのお誘い【2】
今回のブログは、婚活物語です。
完全にフィクションの話になります。
でも、実際にありそうなエピソードを満載して、日々婚活に奮闘している方々に共感してもらえるようなお話にしていきたいと思っております。
それでは、私、高橋美帆 の婚活物語、楽しんでいただけると嬉しいです。
私の婚活物語
「イケメン佐野くんのお誘い」
【2】
「高橋さん、この薬のセグメント別売上をグラフで出してくれる?」
頭の上から佐野くんの声が降ってきた。
私の傍らにやってきた佐野くんが、腰を折るようにして私が見ているパソコン画面を覗き込む。そこには我が社の製品一覧が表示されていた。
「ほらこれっ」
そう言って、佐野くんが一つの製品名を指さす。
「あ、はい。……えっと、そこのプリンターから出てきますから」
カタカタとキーボードを打ちながら返事をする。
「OK。ありがとう」
爽やかにそう言って、佐野くんはフロアの隅にあるプリンターに歩いていった。
視線を回してその背中を見送る。
結局、私は結婚が決まった戸越さんのお祝い会には出席しなかった。
だいたい、私の所属する総務課からは誰も参加しなかったし、他の学術や開発からもよっぽど親しい人しか顔を出さなかったらしい。
つまりは、同僚MRのいつもの飲み会だったのだろう。
そんなふうに思いながら、プリンターから用紙を取り上げている佐野くんを見ていた。
すると、その視線に気づいたかのように、佐野くんが私を振り返って私に向かって右手を上げるとグーサインをしてきた。
とっさに固まって、左手の指が関係ないキーを押してしまった。
慌てる私にかまわず、佐野さんはスタスタと自分の席に戻って行った。
いったい、あの話はどうなったんだろう?
――飲みに行こうって言ったよね?
いわゆる社交辞令みたいなもの?女の人にはそう言っておかないと失礼だとかいう、プレーボーイ特有の格言?
あれから、いつ誘われるんだろうって、毎日毎日そわそわしてしまっている。いつ誘われてもいいように、服装だって気を遣っている。
視線を落として、自分の服を確かめるようにじっと見つめた。
なんか、馬鹿みたいだ。あんな佐野くんの言葉を真に受けて。
――自分が情けない。
その日もいつも通り残業をして、一人退社しようとエレベーターを待っていた。
「あれ?美帆」
「杏奈」
ああ、また会っちゃった。
やだなあ。今日はまた金曜日だわ。
「おつかれさまあ」
杏奈の甘ったるい声が響く。
とりあえず、社会人の便利な挨拶“おつかれさま”。
「おつかれさま」
「今日も残業。嫌になっちゃうね。」
「ほんとね」
「これからね、銀座まで行かなくちゃならないの」
「へえ」
「横浜からだと近いようで遠いよね」
「そうね」
ああ、どうしていくのか聞いてほしいのよね。聞くわよ。聞きますわよ。
「なに?銀座で何かあるの?」
待ってましたと言うように、杏奈の瞳がきらっと輝く。
「えっとね、彼の行きつけのお寿司屋さんが銀座にあるんだって。今日は、付き合って三か月記念にご馳走してくれるの」
「へええ。すごいわね」
驚いた声を出しておいた。
そう言えば、いつもにもまして、メイクもネイルも服も気合が入っている。
フリフリのピンクのワンピーズに白いボレロ。
まあ、似合うっていやあ似合うわ。
でも、まだ付き合って三か月なのね。ラブラブだわね。
まあ、銀座で高級なお寿司でも何でも食べてきてよ。
私は家で母の手料理でも食べるわ。
浮かれている杏奈とは、横浜駅で別れた。
ホームに立って、ぼうっと目の前の大きな看板広告を見るともなしに見る。
杏奈が彼と知り合ったチャットアプリっていうのは、マッチングアプリとは違うのかしら?でも、アプリでもそんなリッチで素敵な人と出会えるものなのね。
ちょっと、いや、かなり羨ましく思いながら、ふうっと息を吐いた。
その時、後ろからポンっと肩を叩かれた。
「高橋さん」
聞き覚えのある声。
振り返ると、佐野くんが立っていた。
~ to be continued ~