別財布における「相手が貯めていると思っていた」問題を紐く
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別財布における「相手が貯めていると思っていた」問題を紐解く
結婚したら、お金は一緒にするべきなのか。
それとも、お互いに働いているのだから別々でいいのか。
令和の結婚生活では、「別財布」を選択する夫婦も珍しくありません。
夫が家賃を払い、妻が食費や日用品を払う。
あるいは毎月決まった金額を共同口座に入れて、残ったお金はそれぞれ自由に使う。
一見すると、とても合理的です。
ところが別財布には、結婚して5年、10年と経ってから表面化する、少し怖い問題があります。
それが、
「相手が貯めていると思っていた」
問題です。
「貯金あるよね?」から始まる夫婦のすれ違い
例えば共働きの夫婦。
夫は家賃や住宅ローンを担当し、妻は食費や光熱費を担当。
残ったお金については、お互い干渉しません。
夫は思っています。
「妻は堅実だから、ある程度貯金しているだろう」
一方、妻も思っています。
「夫のほうが収入が高いから、将来のお金はちゃんと貯めているだろう」
そして10年後。
子どもの教育費や住宅購入、親の介護など、大きなお金が必要になったときに初めて確認します。
「ところで、貯金っていくらある?」
夫「200万円くらい」
妻「え?」
夫「そっちは?」
妻「私も……そのくらい」
ここで初めて、
「もっと貯めていると思っていた」
という問題が発生します。
どちらかが嘘をついていたわけではありません。
浪費家だったとも限りません。
お互いが「相手がやってくれている」と思っていただけなのです。
昭和と令和では「家計」の意味が違う
昭和の家庭では、「夫が働き、妻が家計を管理する」という形が今より一般的でした。
夫が給料を妻に渡し、妻がそこから生活費、教育費、貯金を振り分け、夫がお小遣いを受け取る。
良い悪いは別として、非常に分かりやすい仕組みです。
家計のお金が「見える化」されていました。
ところが令和は共働きが当たり前になり、夫婦それぞれに収入があります。
その結果、
「自分で稼いだお金は自分で管理する」
という考え方も自然になりました。
これは決して悪いことではありません。
むしろ、お互いの自由を尊重できるという大きなメリットがあります。
問題なのは、
「財布が別」なのではなく、
「将来のお金まで別」になってしまうことです。
なぜ「相手が貯めている」と思ってしまうのか
ここには心理学的にも面白いポイントがあります。
人間は、曖昧な部分を自分に都合よく補完して考えることがあります。
毎月きちんと働いている。
家賃も払えている。
外食にも行ける。
旅行にも行ける。
特に生活上の問題が起きていない。
すると、
「きっと貯金もできているだろう」
と考えやすくなります。
しかし、
「生活できていること」と「資産形成できていること」は全く別です。
さらに別財布の場合、自分が負担している金額はよく分かります。
夫は、
「住宅ローンを毎月12万円も払っている」
と思います。
妻は、
「食費、光熱費、日用品、子どもの費用で毎月かなり払っている」
と思っています。
それぞれが自分の負担を強く認識する一方で、相手が実際にいくら負担しているのかは見えにくい。
ここから、
「自分のほうが負担している」
という感覚まで生まれることがあります。
お金の問題が厄介なのは、数字の問題であると同時に「公平感」の問題でもあるからです。
令和は「額面年収」だけでは分からない
もう一つ考えておきたいのが、社会環境の変化です。
日本では1989年に消費税が3%で導入され、その後5%、8%と上がり、現在の標準税率は10%です。
さらに会社員であれば、給与から所得税や住民税だけでなく、健康保険、厚生年金、雇用保険なども差し引かれます。
つまり重要なのは、
「年収500万円ある」
という額面だけではありません。
実際に自由に使える「手取り」がどのくらいあり、そこから住宅費、食費、通信費、保険、教育費などを払ったあとに、いくら残るのかです。
婚活でも相手の年収ばかりに注目してしまうことがあります。
しかし結婚生活を考えるなら、本当に重要なのは年収以上に、
「残ったお金をどう考える人なのか」
なのかもしれません。
別財布が悪いわけではない
ここを間違えてはいけません。
別財布そのものが悪いわけではありません。
むしろ共働き夫婦には、とても合理的な方法です。
お互いが自由に使えるお金を持てる。
趣味や美容、友人との付き合いについて細かく説明する必要がない。
経済的な自立も維持できます。
特に再婚の場合には、それぞれが結婚前から築いてきた資産や、子どもに関する支出などがあるため、完全に財布を一つにすることが現実的ではないケースもあります。
だから、
「共同財布か別財布か」
という二択で考える必要はありません。
大切なのは、
「未来だけは共同管理する」
という考え方です。
「共同貯金」を先に決めてしまう
例えば夫婦それぞれの給料は別々に管理する。
その代わり、
毎月夫5万円、妻5万円。
合計10万円を将来のための資金として確保する。
これなら年間120万円。
10年間続ければ、単純計算で1,200万円です。
もちろん収入差が大きければ、同額ではなく割合で決めてもいいでしょう。
重要なのは金額ではありません。
「余ったら貯金する」
から、
「先に将来のお金を確保する」
へ変えることです。
余ったお金を貯金しようと思っても、人間はなかなか思い通りには行動できません。
収入が増えると、それに合わせて生活水準も上がりやすいからです。
だからこそ、仕組みにしてしまう。
これは夫婦関係だけでなく、資産形成でも非常に大切な考え方です。
婚活中に「貯金いくら?」と聞く必要はない
とはいえ、交際中に突然、
「貯金いくらありますか?」
と聞けば、相手も身構えてしまうでしょう。
もっと自然な方法があります。
「結婚したら財布って一緒がいい?」
「生活費ってどう管理したい?」
「旅行とか趣味にはお金使いたいタイプ?」
「家を買うなら、どのくらいまでなら出していいと思う?」
こうした会話から、その人のお金に対する考え方はかなり見えてきます。
お金の価値観とは、
「節約家か浪費家か」
だけではありません。
何にお金を使うと幸せなのか。
何にはお金を使いたくないのか。
将来の安心と今の楽しみをどのくらいの割合で考えるのか。
そこまで含めて、お金の相性です。
結婚は「財布を一つにすること」ではない
昭和から令和になり、夫婦の形は大きく変わりました。
共働きが増え、それぞれが自分の収入を持ち、自分のお金を自分で管理する。
それ自体は、とても自然な変化です。
だから令和の夫婦に必要なのは、
「全部見せなさい」
でも、
「全部一緒にしよう」
でもないと思います。
必要なのは、
「二人の未来にいくら必要なのか」
を話せる関係です。
結婚後も財布は別でいい。
自由に使えるお金があってもいい。
相手のお金を細かく監視する必要もありません。
でも、
住宅。
子ども。
老後。
病気。
介護。
そして二人でやりたいこと。
このお金だけは、「どちらかが考えているだろう」にしない。
夫婦のお金で一番怖いのは、別財布ではありません。
10年後に二人で通帳を見ながら、
「あなたが貯めていると思っていた」
「私もそう思っていた」
となることです。
財布は別々でもいい。
でも、未来まで別々にしない。
これから結婚する二人にとって、本当に大切なお金のルールは、案外これくらいシンプルなのかもしれません。