51歳からの結婚──シニア婚&週末婚の奇跡
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”わたしこんな歳だし”を超えて、シニア婚&週末婚の奇跡
母親との暮らしは穏やかで、静かに時間が流れていました。仕事を終えて帰宅すると、母が温かい夕食を用意してくれている。そんな日々に感謝しながらも、どこか息苦しさを感じる瞬間があったのです。休日には推し活の遠征で笑顔を取り戻すものの、帰りの車窓に映る自分の姿を見て、心の奥がぽっかりと空く。そんな孤独を、彼女はずっと抱えていました。
美鳥さん(51歳・事務職)と慎一郎さん(52歳・会社員)の物語:
美鳥さんが結婚相談所を訪れたのは、パンデミックの真っ只中。高齢の母と二人暮らし。恋愛経験は少なく、「自分は地味で恋愛には向かないタイプなんです」と話していました。しかし、私とのカウンセリングを通じて見えてきたのは、恋愛への恐れではなく、“誰かに自分を委ねること”への抵抗でした。
「母と娘の関係」に隠れていたもの
母は「あなたは仕事に集中して」と言いながらも、無意識に娘を手放せずにいました。娘の側も、それを“愛”と信じてきた。けれど、それは相互の依存でもあったのです。美鳥さんは、母を支えながら自分を抑える生き方を続けてきました。ある日、私はこう問いかけました。
「もしお母さんがいなかったら、あなたはどんな人生を選びますか?」
彼女はしばらく黙った後、小さく笑いました。その笑顔の奥に、ほんの少しの“自由”が見えました。その瞬間から、彼女の中で何かが動き始めたのです。
出会い──慎一郎さん(52歳・会社員)
半年間の活動のあと、少しの間の休会を経て、再びお見合いを再開して二人目に出会ったのが、慎一郎さんでした。彼もまた、長い独身生活を続けてきた人。過去の交際では、気の強いタイプの女性とうまくいかず、自分を抑えすぎて疲れてしまった経験がありました。だからこそ、穏やかな笑顔をたたえた美鳥さんに惹かれたのです。
美鳥さんもまた、恋愛経験は少なく、母と共に生きてきた。どちらも“自分を守る生き方”を選んできた二人。だからこそ、共感と安心感が自然に生まれました。彼は言いました。
「あなたといると、いつもの自分でいいんだと感じるんです。」
そして彼女もまた、心の奥で同じ想いを抱いていました。二人の関係は、焦りや駆け引きのない、静かな信頼の上に育っていきました。
すれ違いと、ほんの少しの勇気
順調に進んでいた交際にも、小さなすれ違いが訪れます。ある日、美鳥さんが推し活仲間との遠征を話したとき、慎一郎さんが少し寂しそうに言いました。
「来週のデート、楽しみにしてたんだけどな。」
以前なら「じゃあ行くのをやめます」と自分を引っ込めていた美鳥さんでしたが、この日は違いました。
「推し活も行きたい。でも、あなたとも過ごしたい。だから日曜の午後に戻ってくるね。」
“どちらかを選ぶ”のではなく、“どちらも大切にする”。その一歩が、二人の関係をさらに深めました。
「週末婚」という選択
真剣交際に進んでから、二人は互いの親の存在について率直に話し合いました。どちらにも高齢の親がいて、一人暮らしの自由も友人関係も犠牲にしたくない。どちらも大切にしたい。ある日、彼のお気に入りのカフェで向き合いながら、こんな会話がありました。
「母を一人にするのが、やっぱり少し怖いんです。」
「うちも母が一人で、実家が心配でね。でも、どちらの親も大事にしながら、二人の時間も作れたらいいと思う。」
その一言から、”週末婚”という新しい形が生まれました。平日は、彼が実家の近くの新居に住み、彼女は今まで通り実家暮らし。週末だけ彼が待つ新居で一緒に暮らす。毎日一緒にいなくても、心は寄り添っていられる。二人はそう信じて、互いの自由と時間を尊重する関係を築いていったのです。
「全部を共有しなくてもいい。だから、共有する時間がうれしいんです。」
と美鳥さんは語りました。
結婚という“安心の形”
いまも二人は週末婚を続けながら、静かで確かな日々を送っています。市場で野菜を選び、夕方には映画を観ながら一緒にコーヒーを飲む。そんな時間の中で、美鳥さんは気づきました。幸福とは“何かが起こること”ではなく、“安心して誰かと過ごすこと”なのだと。
「思い切って結婚して良かったです。こんなに穏やかな関係があるなんて、知らなかった。」
かつて“地味で恋愛に向かない”と思っていた自分へ、いまならこう伝えられます。
「もう一度、誰かと生きることを恐れないで。」
結婚は、若さや勢いではなく、“安心をつくり合う力”です。シニア世代の恋には、派手さよりも深い理解と優しさが似合います。あなたにも、そんな物語が静かに訪れるかもしれません。