47歳からのシニア婚──“もう一度、愛を信じてみる”
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美嘉さん(仮名・47歳・元書店員)と、聡さん(同・50歳・会社員)の物語──
美嘉さんが結婚相談所のカウンセリングに訪れたのは、夫を突然の病で亡くして3年が経った頃でした。最愛の夫を見送り、さらに母親も亡くし、静まり返った家の中で「もう誰かと生きることはない」と思っていたといいます。読書が好きで、若い頃は文学少女だった彼女の世界は、夫との思い出で埋め尽くされていました。
「夫は私の人生そのものだったんです。あんなに愛してくれた人はいませんでした。」
──初めての面談でそう語った美嘉さんの声は、どこかにまだ、愛する人のぬくもりを探しているようでした。
「モーニングページ」との出会い
カウンセラーの私は、美嘉さんにある提案をしました。「毎朝、3ページだけ、心に浮かんだことをそのままノートに書いてみてください」と。いわゆる“モーニングページ”です。目的は、心の声を取り戻すこと。悲しみの中に押し込められた“いまの自分”と再び出会うためでした。
最初の頃は、「書いても何も変わりません」と言っていた彼女が、1ヶ月後にこう話してくれました。
「書くことで、亡き夫と“会話”している気がするんです。夫が、『もう自分を責めるのはやめていいよ』って言ってくれているようで……」
モーニングページで自分と対話するうちに、彼女は心の奥に秘めてきた想いに気づきを得ます。「夫が病に倒れたのは自分のせいでは?」と、ずっと胸の奥で自分を責めてきたことを。ペンを走らせるたびに、その痛みが少しずつ解けていったのです。
その日から、美嘉さんの表情が少しずつ変わり始めました。ペン先が、過去を清め、未来の光を導くように動き出していたのです。
新しい出会い──聡さん(50歳・会社員)
成婚した彼との出会いは、結婚相談所でのお見合いを始めて4ヶ月ほど経ってからでした。聡さんは、穏やかで誠実な男性。10年前に離婚し、成人した娘(親権なし)がいます。元妻は再婚しており、彼自身も長い間「もう恋愛はいい」と思っていたタイプ。二人は同じ“静かな優しさ”を持つ者同士、初対面から落ち着いた空気が流れました。
しかし、彼女が真剣交際を視野に入れた、交際が2ヶ月ほど経った頃──ひとつの小さな事件が起きます。
デートの帰り際、少し酔った聡さんがふと打ち明けました。
「実は、元妻との想い出の写真をまだ捨てられなくて……」
その言葉に、美嘉さんの胸はズキッとしました。心のどこかに「私も亡き夫の写真を飾っているのに」という思いがありながらも、裏切られた思いで、怒りが込み上げたのです。彼女は「そんな人とは無理です」とだけ伝え、交際を終了しました。
再び、幸せと向き合う勇気
1週間後、先方の相談所を通して、私宛に聡さんから長いメールを預かりました。
「あなたに出会って、ようやく本気で誰かを大切にしたいと思えたんです。過去に縋っていた自分に気づかせてくれたのはあなたでした。もう、写真は手放しました。」
それを読んだ美嘉さんの目に、涙が滲みました。怒りの奥にあったのは、嫉妬でも嫌悪でもなく、自分自身の“執着”への気づきだったのです。彼女もまた、亡き夫との想い出の中で生きていた。彼の誠実な言葉に、自分も変わらなければと感じました。
「私も、少しずつ手放していきたい。夫への愛を否定するんじゃなくて、新しい形で生きるために」
二人は再び交際を再開しました。最初のデートでは、ぎこちなく笑い合いながらも、以前よりも深い対話ができたといいます。夕暮れのカフェで、聡さんがそっと言いました。
「もう過去の誰かじゃなくて、今のあなたと生きたいです。」
その瞬間、美嘉さんの心の奥で“静かな決意”が灯りました。誰かを失っても、私は再び愛することができる。愛とは、“忘れること”ではなく、“形を変えて受け継ぐこと”だと。
再婚という“第二の人生”を生きるために
シニア婚活では、「いまさら恋愛なんて」「他人と暮らすのは面倒」といった声をよく耳にします。でも、人生の後半で芽生える愛は、若い頃とはまったく違う深みを持っています。それは、喪失や孤独を経て得た“静かな勇気”のかたちです。
再婚を成功させた人たちは、みな「愛はもう終わった」と思ったところから、再び始めています。彼らに共通するのは、“傷ついても、もう一度関わる覚悟”を持てたこと。そして、“過去を否定しないまま、今の幸せを選べた”ことです。
今日のステップ 🕊
「過去を閉じるのではなく、自分自身を未来へ連れていく勇気を持つ」
1️⃣ まずは、“過去に生きていた時間”をほんの少しだけ、手放してみましょう。
元恋人との写真を整理するのは、裏切りではありません。むしろ、その時間を心の中にきちんと位置づけ直す行為です。
消しても、愛そのものが消えるわけではありません。あなたの中に、確かに残っています。
2️⃣ “新しい誰か”を探すよりも、“今の自分”と出会い直すつもりでお相手と会ってみてください。
婚活は、誰かを選ぶ旅ではなく、自分がどんな愛し方をする人なのかを知る旅でもあります。
相手にどう見られるかよりも、自分がどんな瞬間に心を動かされるのか──そこに、あなたの未来があります。
3️⃣ そして覚えておいてほしいのは、過去を背負ったままのあなたを受け止めてくれる人が、必ずいるということ。
愛とは、失った人を忘れることではなく、“その人から受け取った優しさ”を、次の誰かに引き継ぐことなのです。
結婚とは、二度と同じ悲しみを繰り返さないための避難所ではなく、“もう一度、誰かと生きていく希望”の始まり。あなたの人生の続きの物語を、誰かと共に紡いでいけますように。