婚活中の今だから、夫婦のセクシャリティという幸福論
- 女性向け
- 男性向け
- 婚活のお悩み
婚活中のあなたへ──“まだ結婚していないのに夫婦生活の話?”と思うかもしれません。でも、この3話のテーマは、結婚前の今だからこそ大切なことです。愛する人と本当に心が通う関係を築くには、“身体と心のつながり”をどう扱うかが、実は大きな鍵になるのです。
1話・2話で描いた「嫌悪」→「恥ずかしさの受容」を経て、今回は結婚後の”成熟”と”癒し”をテーマに、 身体と心のつながりを取り戻す“静かな幸福”へと導きます。
「夫婦になっても、性が苦手なんです。」
「結婚して3年になるんですけど……正直、夫婦生活が苦手で。」
香織(37歳・IT系デザイナー)は、どこか申し訳なさそうに話した。 夫とは喧嘩もなく、会話も穏やか。仲は悪くない。 けれど、体の距離だけがどうしても近づけないという。
「彼は優しいんです。無理強いも絶対しない。でも……
いざ近づかれると、体が強張ってしまって。自分でも“なぜ?”って思うんです。」
婚活を終え、結婚という“幸せのゴール”に辿り着いたはずの香織。
けれど、そこにはもうひとつの“見えない壁”があった。
“気持ち悪い”の記憶が、心を閉ざしていた
婚活メンター・早川「香織さん、思い当たる出来事はありますか? たとえば、“気持ち悪い”と思った記憶。」
香織「あります。昔、付き合っていた人が急に触ってきたことがあって……。
怖くて、泣きながら拒んだことがあるんです。
それ以来、たぶん“触れられる=危険”って体が覚えちゃったのかも。」
早川「なるほど。それは“防衛反応”ですね。
でも、その“防衛”が長く続くと、今度は“安心”にも反応してしまう。
つまり、“愛されること”さえ怖くなる。」
香織「……たしかに。彼のことは好きなのに、心の奥で何かがブレーキをかけてる感じです。」
早川「そこにあるのは、“過去の嫌悪”の残響です。でも、それは決して壊れてるわけじゃない。
むしろ、癒しが始まる準備ができたサインです。」
夫婦のセクシャリティは“癒しの場”になる
早川「私たちは“セックス=行為”だと思いがちですが、本当は“最高のコミュニケーションの一形態”なんです。
心が触れ合っていないのに身体だけ触れても、魂は冷たいまま。
逆に、心から信頼できる相手に触れられると、身体は“ああ、ここは安全なんだ”と安心を覚えます。」
香織「……“癒されるセックス”、ですか?」
早川「そう。“興奮のための性”ではなく、“安心のための性”。お互いの呼吸を感じ、ただ“そこにいる”だけで満たされる時間。
それが本当の“セクシャリティ”です。」
香織「それなら、私も望んでいたことかもしれません。夫ともっと心でつながりたいって、ずっと思ってました。」
早川「性を“義務”ではなく“絆”として感じられるようになると、そこに“癒し”と“至福”が生まれます。
それが、本来の夫婦の幸福です。」
“触れられる私”を取り戻す
香織「でも、どうすれば“怖さ”が消えるんでしょうか?」
早川「消そうとしなくていいんです。まず、“怖い私”をそのまま抱きしめること。
“怖いけど、愛したい”と声に出してみるだけでも、心の中で“許し”が始まります。」
香織「……“許し”。それは自分への、ですか?」
早川「そう。自分の中の“女としての私”を許すこと。拒んでしまった夜も、泣いた記憶も、全部、あなたの一部です。
それを否定せず、“よく生きてきたね”と抱きしめる。その優しさが、夫との関係にも伝わりますよ。」
香織は、涙をこらえるように笑った。
「……なんか、ようやく“自分の体が味方”になれる気がしてきました。」
“癒し”とは、ふたりでつくる安心の時間
夫婦のセクシャリティは、“行為”ではなく“時間”だ。相手を信じて心と身体をゆるめていく時間。
それは、結婚生活の中で最も繊細で、最も美しいコミュニケーション。
夫婦が互いに「怖くないよ」「ここにいるよ」と伝え合えるとき、そこには“癒し”が生まれる。
そしてその先にあるのが、“至福”──言葉では届かない深い安心と、ひとつの生命としてのつながり。
早川「香織さん、愛って“勇気”よりも“安心”から始まるんですよ。 性も同じ。安心が満ちたとき、自然と“触れたい”が戻ってきます。」
香織「……はい。あの人と、もう一度“はじめまして”って言いたい気分です。」
まとめ
「男が”気持ち悪い”の正体」から始まったこの3話の旅は、 実は「自分を取り戻す」プロセスだった。 嫌悪は境界を知らせ、恥ずかしさは自己受容を促し、 そして、安心は“愛の完成”を導く。
セクシャリティとは、 「愛することを、恐れずに感じる力」だ。 そしてその力こそ、夫婦が“ふたりでつくる幸福”の源になる。
エクササイズ|“安心して触れられる私”を育てる3つのステップ
1. “怖い私”を日記に書く。
→ 「触れられるのが怖い」「心を開くのが怖い」など、素直な言葉をノートに書き出してみましょう。否定せず、“今の私”を受け入れることが第一歩です。
2. 身体に“ありがとう”を伝える。
→ お風呂の時間や寝る前に、そっと身体に触れて「今日も守ってくれてありがとう」と声をかけてみてください。触れる=安全、という新しい記憶が芽生えます。
3. 小さな“安心のスキンシップ”を練習する。
→ 手をつなぐ、ハグをする。マッサージをし合うなど、無理のない範囲で“心地よい触れ合い”を体験してみましょう。安心を重ねることで、“癒しのセクシャリティ”がゆっくり育ちます。
“癒し”とは、何も起こさない時間にこそ生まれるもの。焦らず、怖さも含めた“自分”と仲直りしていくプロセスが、愛の成熟への道です。