結婚は幸せにつながらないと思ってない?
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“信頼”の本当の意味とは?
「結婚はコスパが悪い」「婚活はタイパが悪い」──そんな言葉がSNSにあふれる時代。効率最優先で、傷つかない恋愛を選ぶ人が増えている。でも、本当にそれで“幸せ”を感じられるだろうか?もしかしたら私たちは、結婚そのものではなく、“信頼すること”に怯えているだけなのかもしれない。沙織さん(32歳・事務職)の小さな一歩を通して、その本当の意味を探してみましょう。
「幸せな結婚なんて、あるの?」
沙織は、婚活を始める前から迷っていた。カウンセリングの最中も、婚活メンター・早川相手に「結婚って、そんなにいいものかな?」と、何度もつぶやいてしまう。口癖のように。
早川:「沙織さん、それは“結婚に希望を持てない”というより、“信頼の実感が持てない”状態なんですよ」
沙織:「信頼……ですか?」
早川:「うん。アドラー心理学では、“信用”と“信頼”は違う。信用は“実績”で測れるけど、信頼は“これから”を信じること。未来に賭ける勇気なんです」
“信用”でしか生きられなかった世代
早川:「君たちの時代はね、ずっと“信用ゲーム”の中で育った。テストの点数、偏差値、内定の数、上司の評価──すべてが“数字”で価値を決めてきた。努力すれば報われる、でも失敗すれば取り返せない。そんな世界では、“信頼”よりも“比較”のほうが安全に思えてしまうんです」
沙織:「たしかに。恋愛でも、“選ばれる努力”ばかりしてました」
早川:「そう。誰かに“任せる”“委ねる”が怖い。信頼って、失敗を受け入れる勇気が必要ですからね」
沙織はうつむいた。たしかに、好きになっても「裏切られたくない」「傷つきたくない」が先に立つ。損得勘定が、恋のブレーキになっていた。
“心を開いた瞬間”の奇跡
ある日のセッションで、沙織はため息をついた。「婚活って、条件を満たす人を探す作業みたいで……正直、心が動かないんです」
早川:「そうですね。多くの人が“失敗しない相手探し”をしてしまう。でも、本当の出会いは、“自分の気持ちを伝える瞬間”からしか始まらないんですよ」
彼の言葉に背中を押され、次のデートで沙織は思い切って試してみることにした。相手の男性が「大事なプレゼンで、上司に厳しい指摘を受けた」と苦笑したとき、彼女はつい口をついて出た。「そんなことを素直に話せるなんて、誠実な人ですね」
一瞬の静けさのあと、彼はふっと笑った。「そう言われるの、初めてです。ありがとう」
その笑顔を見た瞬間、沙織の胸の奥が温かくなった。気づけば、自分も笑っていた。完璧さを手放したときに生まれた、静かな安堵──それが、彼女にとって初めての“信頼の手触り”だった。
信頼は“幸せ”の原点
後日のセッションで、早川が言った。「アドラーいわく、“信用”は条件付きなんです。銀行の信用は担保が必要でしょう? でも“信頼”は、“騙されてもいい”という無条件の勇気なんです」
沙織:「騙されてもいい……?」
早川:「そう。婚活では学歴や収入、家柄など、“信用”の指標が重視される。でも“信頼”は、自分の未来を信じること。失敗も傷も含めて、“それでも自分は立ち上がれる”と信じる力です。それが“自己信頼”なんです」
沙織:「……つまり、信頼って、相手を信じるより、自分を信じる覚悟なんですね」
早川:「その通り。人生を信じられるかどうか。信頼は“安全”ではなく、“勇気”の上に成り立つ。だから結婚は、“信頼のリハビリ”なんです」
沙織は笑った。「失敗しても、しょうがないか。もう大丈夫って思える自分になれる気がします」
早川:「それが信頼の始まりですよ」
📝今日のステップ:信頼を取り戻すための3つの練習
1. ”信用”ではなく“信頼”で会話してみる:
たとえば、デートで仕事の話題になったときに──「上司がどう評価してるか」ではなく、「あなた自身はその仕事をどう感じてる?」と聞いてみる。評価の会話を、感情の共有に変えてみよう。
2. 競争ではなく共創の目線を持つ:
彼との体験型デートで──相手の得意・不得意を比べず、「一緒にこの料理、うまく作れるかな?」と協力してみる。相手のペースに合わせる瞬間に、信頼の芽が育つ。
3. 小さな自己信頼を積む:
1日の終わり、お風呂の中や寝る前の時間に──「今日、自分との約束を守れたこと」を1つ思い出してみる。小さな達成感が、他人を信じる準備になる。
カウンセラーの私が思うのは、効率では測れない“信頼の幸福”。それは、コスパを超えた、勇気の先にある豊かさなのかも。婚活では“信用”が入口かもしれません。けれど、結婚生活を続けていくために必要なのは、条件よりも“信頼”という関係の質です。条件を超えた“人と人の絆の温もり”こそが、結婚という長い旅路を支える土台なのです。