婚活彩々物語<女性編①>
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~橘 奈緒 編~①
橘奈緒、35歳。
都内にある大手広告代理店のエリート管理職に就く彼女は、今日も完璧なスーツ姿でオフィスを歩いていた。少し長めのボブスタイルにこげ茶の髪、ヒールの音がビルの廊下に響くたび、後輩たちが背筋を正す。誰もが彼女に憧れ、尊敬していた。
そんな奈緒が、珍しく溜息をついたのは、親戚の結婚式の帰りだった。
幸せそうな花嫁の笑顔、親族の涙、両親の満足げな表情。
そのすべてが、奈緒の胸に重くのしかかっていた。
「そろそろ奈緒ちゃんも、考えたら?」と伯母に言われた言葉が、頭から離れない。
帰宅後、何気なく開いたSNSには、結婚や出産報告の投稿が並び、自分だけが違うステージにいるような気がした。
"今の私が結婚できないなんて、おかしい。学歴もキャリアも、外見だって悪くない。なのに、どうして?"
その夜、奈緒はスマートフォンで「ハイスペック男性と出会える 結婚相談所」と検索し、上位に出てきた一件に目が留まった。
『自己啓発×婚活』選択理論心理学に基づくカウンセリングで、あなた自身の価値観を明確に。外側の条件ではなく、内側から幸せを選ぶ婚活を。
「なんか、ちょっと意識高い系…」そう思いながらも、なぜか気になって、そのまま無料カウンセリングを予約していた。
数日後、奈緒は都内の静かなカフェにいた。
結婚相談所のオフィスはなく、カウンセリングはカフェまたはZOOMで行うという、出張型のスタイルだった。
少し意外だったが、カフェの落ち着いた雰囲気は友達との待ち合わせのような気分にさせた。
約束の時間ぴったりに現れたのは、穏やかな笑みを浮かべる40代の女性、美園だった。
「こんにちは、橘さん。今日は“条件”ではなく、“想い”を聞かせてくださいね」
カフェの隅の静かな席で、美園の柔らかな声に、奈緒の緊張は少しだけ解けていく。
「理想の男性像は?」と問われ、奈緒は即答する。
「年収800万以上、大卒以上、できれば同じくらい仕事ができる人。背は175cm以上で…」
その答えに、美園は微笑みながらこう尋ねた。
「それは、あなたの“本当の理想”ですか? それとも、“世間が言う理想”ですか?」
奈緒は答えに詰まり、自分がいかに「条件」で相手を測ってきたかに気づき始める。
「じゃあ、私は何を求めているんだろう…?」
その問いが、奈緒の心に小さな波紋を広げていく。
カウンセリングの帰り道、カフェを出てオフィス街の夕焼けの中を奈緒はゆっくり歩いていた。
今日の自分は、少しだけ、これまでの“バリキャリ・橘奈緒”とは違う気がしていた。
to be continue
【※この物語はフィクションです】