スキルが役に立たない、本当の理由

その理由とは、一言でいえばあなたの「あり方（在り方）」という土台が、まだ盤石ではないから、です。

スキルやテクニックは、いわば料理における「レシピ」や「調理器具」のようなものです。

最高のレシピと最新の調理器具を手に入れても、それを使う料理人自身の腕や、素材に対する愛情、そして「美味しい料理で人を幸せにしたい」という想いがなければ、人の心を動かす一皿は作れません。

むしろ、上辺だけを取り繕った、どこか空虚な料理になってしまうでしょう。

婚活も、これと全く同じです。

あなたの「あり方」—つまり、あなた自身の物事の捉え方、自分に対する信頼、そしてお相手への向き合い方—という土台があって初めて、会話術やLINE術といったスキルはその輝きを放ちます。

例えば、自己肯定感が低く、「どうせ自分なんて…」という気持ちを心の奥に抱えたまま、自信に満ちた会話術を使おうとしたらどうなるでしょうか。

言葉と態度に矛盾が生じ、そのチグハグな印象は、お相手に「何を考えているかわからない人」「不誠実な人」という不安を与えてしまいます。

テクニックは、あなたの「あり方」を増幅させるスピーカーのようなもの。土台が不安で揺らいでいれば、その不安を大きく響かせてしまうのです。

では、その強固な「土台」を築くために、まず何をすべきか。

それは、外に答えを求めるのを一度やめて、あなた自身の内側を深く見つめ、「自分自身の専門家」になることです。

これが「あり方」を整える、一つ目の柱となります。

テクニックを学ぶ前に、あなた自身に問いかけてみてください。

「自分は、どんな時に心からの喜びを感じる人間なのだろう？」

「これだけは譲れない、という価値観は何だろう？」

「5年後、10年後、どんな生活を送っていたら『幸せだ』と笑えるだろう？」

 「そもそも、なぜ自分は結婚したいのだろう？」

これらの問いに、スラスラと、あなた自身の言葉で答えられるでしょうか。

もし少しでも迷うなら、まずはこの「自己理解」にじっくりと時間をかける必要があります。

これまでご紹介してきた「婚活ノート」をつけたり、私たちカウンセラーとのコーチングの時間を活用したりするのも、そのためです。

自分が何を大切にしているかが分かれば、お相手選びの「軸」ができます。

自分がどんな人間かが分かれば、背伸びをしたり、偽ったりする必要がなくなり、お見合いの場でも堂々としていられます。

この「自分は、自分のことをよく分かっている」という感覚こそが、自信の源泉となり、あなたの「あり方」を力強く支える土台の一つになるのです。

そして、「あり方」を支えるもう一つの重要な柱が、お相手への向き合い方です。

あなたは、お見合いの席で目の前にいるお相手を、どんな存在として見ていますか？

「年収は？学歴は？住んでいる場所は？」— 条件をクリアしているかをチェックする「審査対象」でしょうか。 

「自分を楽しませてくれるか？メリットはあるか？」— 自分に何を与えてくれるかを測る「評価対象」でしょうか。

もし少しでも心当たりがあるなら、勇気を出して、その視点を変えてみましょう。

スキルやテクニックが本当に役に立つのは、あなたの目的が「相手を攻略すること」から**「相手という、かけがえのない一人の人間を、深く理解しようとすること」**に変わった時です。

目の前にいる人も、あなたと同じように、悩み、喜び、夢を見て、そして真剣に自分の未来と向き合っている、一人の人間です。

その人の背景にある人生に敬意を払い、「あなたのことを、もっと知りたいです」という誠実な好奇心を持つこと。

その気持ちが根底にあれば、ぎこちない質問も、気の利かない相槌も、あなたの「誠実さ」の表れとして、きっとお相手の心に温かく届くはずです。

テクニックは、この純粋な想いを伝えるための、補助輪にすぎません。

スキルやテクニックを学ぶことは、決して無駄ではありません。しかし、それはあくまで、あなたの「あり方」という土台の上に築かれるべきものです。

まず、自分自身を深く知り、自分という人間の専門家になること。

そして、お相手を一人の人間として心から尊重し、誠実に向き合うこと。

この二つの柱でできた揺るぎない「あり方」という土台があれば、あなたが発する何気ない一言や、自然な微笑みそのものが、どんな洗練されたテクニックよりもパワフルな、最高のコミュニケーションスキルになります。

なぜなら、そこには「あなた」という人間の魅力と体温が、確かに宿っているからです。

もし、自分一人で「あり方」を整えるのが難しいと感じたら、いつでも僕たちを頼ってください。

あなたの魅力を再発見し、強固な土台を一緒に築き上げていくこと。

それこそが、私たちカウンセラーの本当の役割なのですから。