個人事業主とは?法人(会社設立)との違い
個人事業主とは、法人を設立せず、個人で事業を立ち上げて営む方を指します。独立を検討する際は、まず法人設立との違いを把握しておくと、自分に合った形を選びやすくなります。
主な違いを整理すると、次のようになります。
税負担の面では、所得税が所得に応じて税率の上がる累進課税であるのに対し、法人税は資本金1億円以下の普通法人であれば、年800万円以下の所得金額について軽減税率が適用され、それを超える部分に基本税率が適用される仕組みになっています。
そのため、事業の利益がある程度の水準を超えると、法人のほうが税負担を抑えられる可能性があります。ただし、法人化には設立費用がかかり、赤字であっても法人住民税の均等割が発生するなど、税率だけで判断できない要素もあります。
個人事業主として始めて、事業が軌道に乗った段階で法人化を検討するという進め方をされる方も少なくありません。
参照:国税庁「No.5759 法人税の税率」
個人事業主として独立開業するメリット・デメリット

法人設立と比べたとき、個人事業主にはどのような利点と注意点があるのでしょうか。両面を把握しておくと、判断がしやすくなります。
メリット:手続きが簡単で開業費用がほぼ0円・自由度が高い
個人事業主の大きな利点は、始めるまでのハードルが低いことです。
法人を設立する場合、定款の作成と認証、法務局への登記といった手順を踏む必要があり、登録免許税や定款認証の費用も発生します。準備には一定の期間と費用がかかります。
これに対して個人事業主は、税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」(開業届)を提出すれば事業を開始できます。書類の作成自体は難しいものではなく、e-Taxを使えばオンラインでの提出も可能です。
もう一つの利点が、経営の自由度です。株主や取締役会といった仕組みがないため、事業の方向性や取引先の選定、価格の設定などを自分の判断で決められます。事業内容を変更したいと考えたときも、比較的柔軟に動けます。
規模を大きくすることより、自分のペースで無理なく事業を続けたいと考えている方には、個人事業主という形が合いやすいでしょう。
参照:国税庁「A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続」
デメリット:社会的信用度が法人より低く、節税効果に限界がある
一方で、注意しておきたい点もあります。
一つは、社会的信用の面です。取引先によっては、契約の条件を「法人であること」としている場合があります。特に大手企業との取引や、規模の大きな案件では、法人でなければ入り口に立てないというケースも見られます。金融機関から融資を受ける際にも、法人のほうが有利に働く場面があります。
もう一つが、税負担です。個人事業主にかかる所得税は累進課税のため、利益が大きくなるほど税率が上がっていきます。青色申告特別控除などの制度を活用しても、一定の水準を超えると法人より負担が重くなる可能性があります。
また、事業で負った債務については、個人として責任を負うことになります。法人であれば原則として出資の範囲にとどまりますが、個人事業主の場合は事業と個人の資産が明確に分かれていません。
これらは「個人事業主が不利」ということではなく、事業の規模や取引先の性質によって向き不向きが変わるという話です。小規模に始めて様子を見ながら判断していく、という考え方もできます。
個人事業主として独立開業する流れ
個人事業主が独立開業するまでの流れを、5つのステップに整理しました。順番に進めていくと、準備の抜け漏れを防ぎやすくなります。
独立の目的や理由を明確にし、事業計画書を作成する
まずは、漠然とした「独立したい」という気持ちから、実際のビジネスモデルを具体的に考えていきましょう。個人での独立はすべて自分で決めていく必要があるため、開業したいと思った目的や理由を明確にしておきましょう。
独立の目的や理由をはっきりさせておくことは、次のステップへの動機付けになるだけでなく、事業が思うように進まない時期を乗り越える支えにもなります。
事業内容が決まったら、事業計画書を作成してみてください。今やるべきことや開業後のイメージが整理され、頭のなかにあった構想が形になっていきます。
事業計画書とは、事業内容、経営理念、事業戦略、売上や収益の見込みなど、今後の事業をどのように進めていくかを記載したものです。一般的には、次のような内容を記載します。
• 企業の概要、事業の概要
• 商品やサービスの内容
• 経営理念、ビジョンや目標
• 人員計画
• 販売・マーケティング戦略やビジネスモデル
• 競合との比較や市場規模
• 財務計画(資金調達、収支の見通しなど)
融資を受ける際にも提出を求められる書類ですが、それ以上に、自分自身が事業の採算を確かめるための道具として役立ちます。
開業資金(自己資金・融資)を準備・調達する
事業を始めるには資金が必要です。開業手続きにかかる費用はもちろん、設備などの費用や、売上が安定するまでの運転資金も考えておく必要があります。
それらをまかなえるだけの自己資金を用意できれば安心ですが、難しい場合は外部からの調達を検討することになります。主な方法としては、次のようなものがあります。
• 補助金・助成金を活用する
• 融資を受ける
• 出資を受ける
• クラウドファンディングを利用する
融資については、日本政策金融公庫の創業融資があります。あらたに事業を始める方または事業開始後税務申告を2期終えていない方は、原則として無担保・無保証人で各種融資制度を利用できるとされています。
補助金では、中小企業庁の「小規模事業者持続化補助金」などが代表的です。公募期間や補助上限額、対象要件は年度ごとに変わるため、申請を検討する際は最新の公募要領をご確認ください。
あわせて意識しておきたいのが、手元に残す資金です。自己資金をすべて開業に使ってしまうと、売上が立つまでの期間に生活が立ち行かなくなることがあります。目安として、生活費と運転資金の数ヵ月分は残しておくと安心です。
関連記事:独立開業するには?会社設立のための準備と注意点を解説
参照:日本政策金融公庫「創業融資のご案内」
参照:中小企業庁「小規模事業者持続化補助金について」
事業用の銀行口座・クレジットカード・会計ソフトを準備する
書類の提出に進む前に、お金まわりの環境を整えておくと、管理が楽になります。
事業用の銀行口座とクレジットカードを用意し、事業に関する入出金をそこに集約しましょう。プライベートの口座と混在していると、通帳の明細1行ごとに「事業用か生活費か」を判別・分類する作業が発生します。取引が増えるほどこの負担は膨らみ、経費の計上漏れの原因にもなりがちです。
口座を分けておくと、次のような利点があります。
• 通帳の取引がそのまま帳簿の元データになり、記帳の手間が減る
• 事業の収支が一目でわかり、採算の判断がしやすくなる
• 税務署などから説明を求められた際に、根拠を示しやすい
開業届に屋号を記載しておけば、屋号名義(または「屋号+個人名」名義)での口座開設ができる金融機関もあります。取引先から見た印象にも関わる部分なので、事業の性質に応じて検討してみてください。
あわせて、クラウド会計ソフトの導入も検討しておきたいところです。銀行口座やクレジットカードと連携させると取引データが自動で取り込まれ、勘定科目の候補も提案されるため、簿記の知識が少なくても記帳を進めやすくなります。確定申告の負担を軽くするうえでも役立ちます。
税務署へ開業届・青色申告承認申請書を提出する
事業の準備が整ったら、税務署へ書類を提出します。ここで提出するのが、開業届と青色申告承認申請書の2枚です。
開業届の提出期限は、2026年1月1日以後に事業を開始した場合、事業を開始した日が属する年分の確定申告期限までとされています。以前は「事業開始から1ヵ月以内」とされていましたが、現在は期限に余裕がある形に改正されています。
一方、青色申告承認申請書の期限は、原則としてその年の3月15日まで、その年の1月16日以後に開業した場合は開業日から2ヵ月以内です。開業届とは期限が異なるため、こちらを逃すとその年は青色申告を適用できません。
期限の違いによるうっかりを防ぐという意味でも、2枚を同時に提出しておく方法が無難でしょう。
それぞれの書類の詳細は、次の章でご説明します。
参照:国税庁「A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続」
参照:国税庁「A1-8 所得税の青色申告承認申請手続」
国民健康保険・国民年金への切り替え手続きをおこなう
会社を退職して独立する場合は、税務署への手続きとは別に、社会保険の切り替えが必要になります。会社員時代は勤務先が手続きをおこなっていた部分なので、見落としやすいところです。
年金について
会社員として厚生年金に加入していた方が退職して自営業者等になる場合は、国民年金第1号被保険者への切り替え手続きを行い、国民年金保険料を納めることになります。手続き先は、お住まいの市区町村の窓口です。
健康保険について
健康保険には、主に2つの選択肢があります。
一つは、市区町村の国民健康保険に加入する方法です。もう一つが、退職前に加入していた健康保険を任意継続する方法で、協会けんぽの場合は「健康保険任意継続被保険者資格取得申出書」を退職日の翌日から20日以内に提出する必要があります。
どちらが有利になるかは、前年の所得や扶養している家族の人数によって変わります。国民健康保険料は前年の所得をもとに計算されるため、独立1年目は会社員時代の所得に応じた保険料がかかる点にも注意が必要です。
判断に迷う場合は、市区町村の窓口で国民健康保険料の試算を出してもらい、任意継続の保険料と比較してみるとよいでしょう。任意継続には期限があるため、退職前におおよその見当をつけておくと慌てずに済みます。
参照:日本年金機構「会社を退職したときの国民年金の手続き」
参照:全国健康保険協会(協会けんぽ)「任意継続」
個人事業主の開業に必要な提出書類
「どこに何を出せばいいのか」がわかりにくいという声をよく聞きます。ここでは、主な書類3点について、提出先と期限、提出する意味を整理します。
開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)
開業届は、個人事業を始める際に税務署へ提出する書類です。正式には「個人事業の開業・廃業等届出書」といいます。この書類を提出することで、国や税務署に「事業を始めました」と届け出たことになります。
提出先は、納税地(原則として自宅の住所地)を所轄する税務署です。提出方法には、e-Taxソフトで作成してオンラインで提出する方法の他、書面を作成して税務署へ持参または郵送する方法があります。e-Taxで提出する場合、本人確認書類の提示または写しの添付は不要です。
書類には、氏名・住所・マイナンバー・職業・屋号・事業の概要・開業日などを記載します。屋号の記入は必須ではありませんが、事業用口座の開設を考えている場合は書いておくとよいでしょう。
提出することで得られる主な利点は、次のとおりです。
• 青色申告承認申請書とあわせて提出することで、青色申告の特典を受けられる
• 屋号名義の事業用口座を開設できる金融機関がある
• 事業を営んでいることの証明として、書類を提示できる
なお、提出期限は、2026年1月1日以後に事業を開始した場合、事業を開始した日が属する年分の確定申告期限までです。
関連記事:開業届の書き方と提出方法!個人事業主のための青色申告等の基礎知識
関連記事:副業時の確定申告、しないとどうなる?20万円ルールとは?
参照:国税庁「A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続」
所得税の青色申告承認申請書
青色申告の特典を受けるために提出する書類です。この書類を出していなければ、どれだけ丁寧に帳簿を付けていても白色申告となり、青色申告特別控除は適用されません。
提出期限は、青色申告をしようとする年の3月15日までです。ただし、その年の1月16日以後にあらたに事業を開始した場合は、事業開始等の日から2ヵ月以内となります。例えば、5月1日に開業した場合は6月30日が期限にあたり、これを過ぎると青色申告の適用は翌年からになります。
1年分の控除の機会に関わる部分なので、開業届と同時に提出しておくと確実です。
参照:国税庁「A1-8 所得税の青色申告承認申請手続」
青色事業専従者給与に関する届出書
生計をともにする配偶者や親族に事業を手伝ってもらい、その対価として給与を支払う場合に提出する書類です。
青色申告では、生計をともにする配偶者や親族(15歳以上)が事業に専従している場合、支払った給与のうち適正な金額を必要経費に算入できます。
この扱いを受けるには、青色事業専従者の要件を満たしたうえで、「青色事業専従者給与に関する届出書」を納税地の所轄税務署長に提出しておく必要があります。提出期限の考え方は青色申告承認申請書と同じで、必要経費に算入しようとする年の3月15日まで(1月16日以後に開業した場合や、あらたに専従者がいることとなった場合は、その日から2ヵ月以内)です。
なお、白色申告の場合は、生計を一にする配偶者などに支払った給与等を必要経費に算入することはできませんが、事業専従者控除として、配偶者は最高86万円、15歳以上のその他の親族は最高50万円を必要経費として差し引ける仕組みがあります。
家族に手伝ってもらう予定がある方は、開業のタイミングであわせて検討しておくとよいでしょう。
参照:国税庁「No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除」
参照:国税庁「A1-10 青色事業専従者給与に関する届出手続」
個人事業主が押さえておくべき「税金」と「確定申告」

開業後に向き合うことになるのが、税金と確定申告です。あらかじめ全体像を把握しておくと、想定外の出費に慌てずに済みます。
青色申告と白色申告の違い
確定申告には、青色申告と白色申告の2つの方法があります。事前に承認申請書を提出しているかどうかで、どちらになるかが決まります。
青色申告の特徴
青色申告特別控除として、所得金額から最大65万円を差し引ける点が大きな利点です。控除額は65万円・55万円・10万円の3段階で、それぞれ要件が異なります。
55万円の控除を受けるための要件は、次のとおりです。
• 不動産所得または事業所得を生ずべき事業を営んでいること
• これらの所得に係る取引を正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)により記帳していること
• その記帳に基づいて作成した貸借対照表・損益計算書などを確定申告書に添付し、確定申告期限までに提出すること
そのうえで、優良な電子帳簿の要件を満たした電子帳簿保存をおこなうか、確定申告書等を提出期限までにe-Taxで提出すると、控除額は65万円になります。上記の要件を満たさない青色申告者は、10万円の控除となります。
この他、事業が赤字になった場合にその損失を翌年以後3年間にわたって繰り越せる、家族への給与を経費にできるといった特典もあります。
白色申告の特徴
事前の申請が不要で、記帳の方法も簡易なもので足りるため、手続きの負担は軽くなります。ただし、青色申告のような控除や特典は用意されていません。
副業の規模が小さいうちは10万円控除の青色申告から始め、事業の拡大にあわせて複式簿記へ移行するという進め方も考えられます。
参照:国税庁「No.2072 青色申告特別控除」
参照:国税庁「No.2080 白色申告者の記帳・帳簿等保存制度」
個人事業主が納める4つの税金
個人事業主が関わることになる主な税金は、次の4つです。
※納付時期は自治体や制度によって異なる場合があります。詳細は各窓口でご確認ください。
見落とされやすいのが、住民税と個人事業税です。いずれも前年の所得をもとに計算されるため、事業が好調だった翌年に、収入が落ち着いた時期の納付が重なることがあります。
個人事業税は、法律で定められた業種に該当する場合にかかる都道府県税です。一定の控除があり、所得が少ない場合には課税されないこともあります。対象となる業種や税率は都道府県によって案内が異なるため、お住まいの都道府県の税事務所でご確認ください。
消費税については、基準期間(個人事業者の場合はその年の前々年)における課税売上高が1,000万円以下である場合、原則として納税義務が免除されます。ただし、適格請求書発行事業者(インボイス)の登録を受けている場合は、課税売上高に関わらず納税義務は免除されません。
開業してすぐは基準期間がないため原則として免除されますが、取引先との関係でインボイス登録を検討する場合は、消費税の負担も含めて考えておく必要があります。
税金は、売上ではなく所得(売上から必要経費を差し引いた金額)に対してかかります。経費を正しく計上することが、結果として納税額にも影響します。なお、自宅の家賃や通信費のように家事と業務の両方に関わる支出については、業務で使った割合に応じて按分する必要があります。
参照:国税庁「No.6501 納税義務の免除」
参照:国税庁「No.2210 必要経費の知識」
個人事業主の独立開業で選ぶべきビジネスの特徴
独立を目指す際、好きなことを仕事にするという視点に加えて、事業として続けやすい条件を備えているかどうかを見ておくと、開業後のリスクを抑えやすくなります。ここでは、判断の軸になる3つの特徴を紹介します。
収益モデルが安定している
まず注目したいのが、収入がどのように発生するかという構造です。
案件ごとに報酬が発生する「フロー型」の事業では、仕事を受けなければ収入も発生しません。毎月ゼロから顧客を探し続ける必要があり、売上の波も大きくなりがちです。
一方、会員制や月額制のように、継続的な契約によって毎月売上が積み上がる「ストック型」の事業であれば、契約数が増えるほど翌月以降の見通しが立てやすくなります。
収入が不安定になりやすい個人事業主にとって、一定の固定収入が基盤としてあることは、精神的な余裕にもつながります。焦って安く受注したり、条件の合わない仕事を引き受けたりする場面を減らせるためです。
立ち上がりの早さではフロー型に分がありますが、長く続けることを考えるなら、ストック型の要素を持つ事業を検討してみる価値はあるでしょう。
無店舗・自宅で開業できる
次に見ておきたいのが、固定費の大きさです。
店舗や事務所を借りる場合、敷金・礼金・仲介手数料などの物件取得費に加え、内装工事費が発生します。さらに、開業後は毎月の家賃が売上に関係なくかかり続けます。
多くの事業では、売上が安定するまでに数ヵ月から1年程度の時間がかかるといわれています。この期間に固定費が重くのしかかると、資金が尽きた時点で撤退を余儀なくされることにもなりかねません。
自宅の一室やコワーキングスペース、レンタルオフィスなどを活用して始められる事業であれば、この負担を大きく減らせます。売上が想定を下回った月でも、赤字の幅は限定的にとどまります。
小さく始めて様子を見ながら広げていく、いわゆるスモールスタートが取りやすい点も、無店舗型の事業の特徴です。
人件費や在庫リスクが抑えられる
3つ目が、人と在庫にまつわるコストです。
スタッフを雇う場合、給与だけでなく、求人にかかる費用や教育の時間も必要になります。これらは売上が立つ前から発生するため、開業初期の負担としては小さくありません。まずは一人で運営できる規模の事業であれば、こうしたコストを抑えられます。
在庫についても同様です。商品を仕入れて販売する事業では、売れ残った分がそのまま損失につながります。仕入れに資金を使いすぎて手元の現金が不足する、いわゆる資金ショートは、開業初期に起こりやすい失敗の一つです。
その点、在庫を持たないサービス業であれば、売れ残りという概念がありません。提供するのは自分の時間や知識、仕組みであるため、仕入れのために資金を先に投じる必要もありません。
「一人で回せて、在庫を持たない」という条件を満たす事業は、開業初期の資金繰りが読みやすく、続けやすい傾向があるといえます。
資格なし未経験で開業できる、IBJの結婚相談所ビジネス
ここまで挙げてきた条件を踏まえて、具体的な選択肢の一つとして結婚相談所ビジネスをご紹介します。
なぜ個人事業主の独立開業に結婚相談所が選ばれるのか
個人で独立する際、多くの方が最初に直面するのが「顧客をどう見つけるか」という課題です。ゼロから認知を広げ、信用してもらい、契約に至るまでには時間がかかります。
結婚相談所の場合、連盟に加盟することで既存の会員ネットワークを活用できます。自分の相談所に入会された会員に対して、連盟全体の会員データベースからお相手を紹介できるため、すべてを一人で探し続ける必要がありません。この点は、他の個人事業と比べたときの構造的な違いといえます。
また、個人で独立すると、判断に迷ったときに相談できる相手がいないという状況に陥りがちです。小さなつまずきが撤退の理由になってしまうこともあります。連盟に加盟していれば、研修制度やサポート体制を利用でき、同じ立場のオーナー同士の交流の機会もあります。
そして、この仕事ならではの手応えもあります。担当した会員がよいお相手と出会い、成婚を迎えたときの喜びは、他の事業では得がたいものだという声が多く聞かれます。人の人生の転機に立ち会い、直接感謝される機会が多い仕事です。
IBJの結婚相談所で婚活カウンセラーとして活動するにあたって、特別な資格は必要ありません。これまでの人生経験や、人の話を聞いてきた経験が、そのまま仕事に活きる場面が多くあります。
関連記事:【結婚相談所とは?】おすすめの開業方法を徹底解説!
選ぶべき特徴をすべて満たす「低リスク・高利益率」の仕組み
前章で挙げた3つの特徴を、結婚相談所ビジネスに当てはめて整理してみます。
収益モデルが安定している
結婚相談所は、会員の活動に応じて複数の収入源を持つ点が特徴です。IBJの場合、「入会金」「活動サポート費」「月会費」「お見合い料」「成婚料」の5つに加え、会員限定パーティーの参加費や、各種サービス・商品を会員に紹介した際の成功報酬などから売上を得ることもできます。
なかでも月会費は、会員が在籍している限り毎月発生する収入です。会員数が増えるほど翌月以降の売上のベースが積み上がっていく、ストック型の構造になっています。
無店舗・自宅で開業できる
飲食店や学習塾のようなビジネスは、事務所や店舗がなければ運営が難しくなりますが、結婚相談所については、必ずしも物理的な店舗を構える必要はありません。実際に、自宅の一室やコワーキングスペース、レンタルオフィスなどを活用して開業されているオーナーも多くいます。
店舗を持たないことで、開業時の店舗取得費を抑えられます。月々の賃料が発生しないことも、コスト面では大きな違いになります。
人件費や在庫リスクが抑えられる
結婚相談所ビジネスは、飲食店やコンビニなどのフランチャイズビジネスと異なり、スタッフを大勢雇う必要がありません。オーナー自身が入会希望の方や会員との面談スケジュールを調整できるため、小規模であれば一人でも運営が可能です。
開業初期に人を雇わずにスタートできれば、人件費は最小限で済み、求人経費や教育コストも抑えられます。また、人と人をつなぐサービス業であるため、商品を仕入れる必要がなく、在庫を抱えるリスクもありません。
こうした条件が重なることで、開業時の投資と毎月の固定費を抑えながら、売上を積み上げていきやすい構造になっています。
関連記事:IBJの結婚相談所収益構造とモデルケース
個人事業主の開業で失敗しないための注意点

開業して失敗しないためには、資金管理や進め方が大切です。ここでは、つまずきやすい2つのポイントと、その対策をご紹介します。
生活費と事業用資金を明確に分けて管理する
個人事業主が陥りやすいのが、事業用の資金と生活費が混ざってしまうことです。
法人と違い、個人事業主の場合は事業のお金と個人のお金の境界が曖昧になりがちです。売上が入ってきた口座からそのまま生活費を引き出していると、事業として使える資金がいくら残っているのかが把握できなくなります。気付いたときには仕入れや経費の支払いに回す資金が足りない、という事態も起こり得ます。
対策としては、次のような方法が考えられます。
• 事業用の口座とクレジットカードを分け、事業の入出金はそこに集約する
• 毎月決まった額を「事業主貸」として生活費用の口座に移す
• 開業前に、生活費の数ヵ月分から半年分程度を別に確保しておく
特に3つ目は、開業後の判断の質にも関わってきます。生活費の心配がない状態であれば、条件の合わない仕事を断る、価格を下げずに交渉するといった選択ができます。逆に、目先の生活費のために売上を追いかけるようになると、事業としての体力を削ってしまうことにもなりかねません。
最初は副業や小資本(スモールスタート)から始める
もう一つ意識しておきたいのが、始め方です。
いきなり退職して、借入をして、事業を立ち上げる。この進め方は、うまくいけば成長も早くなりますが、想定どおりに進まなかった場合の損失も大きくなります。特に、家族の生活や住宅ローンを抱えている場合は、取れるリスクの幅も限られてきます。
より慎重な進め方として、本業を続けながら副業として小さく始めるという方法があります。
• 本業の収入がある状態で、実際に顧客を獲得できるかを確かめられる
• 価格設定やサービス内容を、実際の反応を見ながら調整できる
• 確定申告や帳簿付けの実務に、負担の少ない状態で慣れられる
• 手応えを得てから独立を判断できるため、見通しを立てやすい
無店舗・無在庫で固定費のかからないビジネスであれば、この進め方が取りやすくなります。会員数や契約数が積み上がり、収入の見通しが立った段階で本業に切り替える、という順序であれば、リスクを抑えながら独立を目指せます。
関連記事:会社員におすすめの低リスク副業ガイド!初心者でも安心の副業選び
個人事業主の開業に関するよくある質問
最後に、開業を検討されている方から多く寄せられる3つの疑問についてお答えします。
開業届を出さないと罰則やデメリットはある?
開業届の提出は所得税法で定められていますが、提出しなかった場合の罰則規定は設けられていません。
ただし、提出しないままだと、次のような不都合が生じやすくなります。
• 青色申告承認申請書の提出が後回しになりやすく、青色申告特別控除などの特典を逃しやすい
• 屋号名義の事業用口座を開設できない場合がある
• 事業を営んでいることの証明として提示できる書類がない
特に、青色申告の特典を逃してしまう点の影響は小さくありません。青色申告の承認を受けるには、開業届とは別に「青色申告承認申請書」の提出が必要です。開業届とセットで提出するのが一般的で、開業届を出さないままだと、承認申請書の提出も後回しになりがちです。
罰則がないからといって提出しないでいると、結果的に受けられたはずの控除を逃すことになりかねません。事業として継続的に取り組むのであれば、早めに提出しておくほうが無難でしょう。
参照:国税庁「A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続」
参照:国税庁「A1-8 所得税の青色申告承認申請手続」
会社員が副業で開業届を出すと会社にバレる?
開業届を提出したこと自体が、勤務先に通知されることはありません。
勤務先に副業が知られるきっかけとして多いのは、住民税です。住民税は前年の所得をもとに計算され、会社員の場合は勤務先が給与から天引きして納付します。副業分の所得が加わって住民税額が増えると、経理担当者が気付く可能性があります。
対策としては、確定申告書の第二表にある「住民税・事業税に関する事項」で、給与以外の所得に係る住民税の徴収方法を「自分で納付(普通徴収)」にチェックを入れる方法があります。副業分の住民税の納付書が自宅に届き、自分で納めることになります。
ただし、次の点にはご注意ください。
• 選択できるのは給与・公的年金等以外の所得に係る住民税に限られます。副業がアルバイトなど給与所得の場合は対象外です
• 自治体によって取り扱いが異なり、選択しても普通徴収にならない場合があります
• 記載を忘れると、原則として特別徴収になります
なお、会社員が副業をおこなうこと自体を禁止する法律はなく、厚生労働省のモデル就業規則でも勤務時間外に他の会社等の業務に従事できる旨が示されています。ただし、勤務先の就業規則で許可制・届出制になっていることも多いため、始める前に確認しておくと安心です。
関連記事:副業が会社にバレる4つの理由と防ぐための対策
参照:国税庁「確定申告書等作成コーナー 住民税の徴収方法の選択」
参照:厚生労働省「副業・兼業と労働条件」
自宅を事務所(オフィス)にして開業できる?
自宅を事務所として開業することは可能です。個人事業主の納税地は原則として住所地となるため、自宅の住所で開業届を提出できます。
ただし、賃貸物件にお住まいの場合は、いくつか確認しておきたい点があります。
• 賃貸借契約で事業利用が禁止されていないか
• 分譲マンションの場合、管理規約で事業利用が制限されていないか
• 不特定多数の来客が想定される業態かどうか
来客のない在宅業務であれば問題にならないケースが多いようですが、契約上どう扱われるかは物件ごとに異なります。心配な場合は、貸主や管理会社に確認しておくとよいでしょう。
また、自宅の住所を公開したくないという方もいらっしゃいます。その場合は、バーチャルオフィスやレンタルオフィスを利用して、事業用の住所を別に用意するという選択肢もあります。ホームページや名刺に記載する住所として使えるため、プライバシーの面で安心感があります。
なお、自宅を事務所として使う場合、家賃や水道光熱費のうち業務に使った割合に応じた金額を経費に計上できます。ただし、家事と業務の両方に関わる支出については、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる部分に限られるため、按分の根拠を説明できるようにしておく必要があります。
参照:国税庁「No.2210 必要経費の知識」
自分に合ったスタイルで開業しよう:無料相談会のご案内
個人事業主としての独立は、法人設立と比べて手続きが簡単で、開業費用も抑えやすい選択肢です。一方で、開業後は確定申告や社会保険の切り替えなど、自分で対応する場面が増えていきます。
そして、どのようなビジネスを選ぶかによって、開業初期に抱えるリスクの大きさは大きく変わってきます。毎月の売上が積み上がる収益構造か、店舗を持たずに始められるか、人件費や在庫を抱えずに済むか。この3つを満たす事業であれば、固定費を抑えながら無理なく育てていきやすくなります。
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※本記事は2026年9月時点の法令・公表情報にもとづいて作成しています。税制や社会保険制度は改正されることがあるため、実際の手続きにあたっては最新の情報をご確認いただくか、税務署・税理士等の専門家へご相談ください。